こんにちは!埼玉県県民の森です。
標高約900メートルの園内にも、にぎやかな春の気配が満ちてきました。今日は、ひっそりと足元で咲き始めた小さな青い花のこと、渓流の名歌手の営巣確認、そして事務室の窓に現れた愛らしいお客さまのことを、まとめてお伝えします。
青い星がまたたくように「フデリンドウ」が開花しました
園内の明るい林床で、フデリンドウ(筆竜胆)が咲き始めました。草丈はわずか5〜10センチほどで、うっかりすると見落としてしまうほどの小ささですが、晴れた日の午前から昼にかけて、空を仰ぐようにぱっと花を開いた姿は、まるで地面に青い星が散らばっているよう。思わず足を止めて見入ってしまう可憐さです。
名前の由来は「筆」のかたち
フデリンドウという名前は、花が閉じたときのすぼんだ姿が、毛筆の穂先にそっくりなことに由来すると言われています。晴れた日は星形にパッと開き、曇りや雨の日、そして夕方になるとそっと閉じて、細長い筆のようなシルエットに戻ります。同じ一株でも、天気と時間によって見え方ががらりと変わるのが、この花のおもしろいところです。
花冠は5つに裂け、その間に小さな副片があるため、ぱっと見ると10枚の花びらのように見え、小さいながらも華やかな印象を与えてくれます。
花言葉は「高貴」「誠実」「真実の愛」
フデリンドウの花言葉には、「高貴」「誠実」「真実の愛」「本当の愛」「正義」などがあります。
- 高貴……青紫の花色は、古くから気品ある色として大切にされてきたことに由来すると言われます。
- 誠実……晴れた日にだけまっすぐ空へ向かって開き、曇天や雨の日にはきちんと閉じる、そのまっすぐなふるまいから生まれた言葉と伝えられています。
- 真実の愛・本当の愛……目立たないけれど、毎年同じ場所で静かに咲く姿が、変わらぬ愛情のイメージと重ねられています。
小さな花ひとつに、こんなにもたくさんの意味が込められているのかと、改めて立ち止まって眺めたくなりますね。
雨が運ぶ、次の世代へのバトン
フデリンドウの種には、タンポポのような綿毛がありません。そのかわり、花が終わったあとの果実は上向きにぱっくりと口を開き、そこに雨粒が当たることで種が周囲へはじけ飛んでいくと考えられています。「晴れの日に咲き、雨の日に種を運ぶ」。小さな体で、季節のすべてをうまく味方につけて命をつないでいる姿に、静かな感動を覚えます。
渓流の名歌手「ミソサザイ」が営巣中です
園内の沢沿いで、ミソサザイが営巣しているのを確認しました(※巣の場所はそっと見守りたいので非公開とさせてください)。
ミソサザイは体長わずか10センチほど、体重もおよそ10グラム前後という、日本でも最小クラスの小鳥です。全身は落ち着いた茶褐色で、ぴんと立てた短い尾と、まん丸でずんぐりしたシルエットがなんとも愛らしい姿をしています。
小さな体から響く、大きなさえずり
見た目は地味ですが、その声は森じゅうに響きわたるほどパワフル。「チュリチュリチリリリイー」と、高く澄んだ音を高速で連ねる複雑な歌声は、「鳥の王様」と呼ばれることもあるほどです。園内を歩いていると、沢のほうから朗々と聞こえてくるさえずりに、きっとはっとさせられるはずです。
苔むした岩場につくる、球形の巣
ミソサザイはコケや枯れ枝を編み込んで、球形から壺のような形の巣をつくります。木の根元の隙間や崖の割れ目、渓流沿いの湿った岩場など、苔むした自然な環境を必要とする鳥で、園内の沢沿いに残された豊かな自然環境は、彼らにとって大切な繁殖の場になっています。
また、オスが縄張りのなかにいくつも巣をつくり、メスがそのなかから気に入ったひと巣を選ぶ、というユニークな暮らしぶりでも知られています。森の奥から響く歌声は、パートナーへのラブソングでもあるのかもしれません。
見つけようとすると難しい鳥ですが、沢沿いのベンチでゆっくり耳をすませていると、意外と近くから声が届いてくることがあります。双眼鏡とあわせて、「耳での探鳥」もぜひ楽しんでみてください。
窓越しにやってきた、小さなお客さま「コガラ」
そしてもう一つ、うれしい出来事が。事務の仕事をしていたら、窓の外の枝にコガラがちょこんとやってきて、こちらの様子をのぞいてくれました。

黒いベレー帽のような頭と、ほっぺの白がくっきりとしたコントラストになっていて、なんとも上品で愛らしい姿。くるりと首を傾げながら、しばらく窓越しに私たちの仕事ぶりを見学して(?)くれました。「今日もおつかれさま」と声をかけられたような気がして、思わず顔がほころびました。
園内では、シジュウカラ・ヤマガラ・ヒガラなどのカラ類のなかまに出会えるチャンスがたくさんあります。コガラは頭の黒いキャップと、くちばしの下の小さな黒い「よだれかけ」模様が目印。高原の森が好きな鳥なので、標高約900メートルの県民の森は、コガラにとっても居心地のよい場所のようです。
園内を歩くときのおすすめ
- フデリンドウは、晴れた日の午前中から昼過ぎが開花のベストタイミングです。曇りや雨の日、夕方は花が閉じてしまうので、お天気と時間を見てお出かけください。
- 野鳥観察は、食べ物を使わずに、双眼鏡でそっと見守っていただけるととてもうれしいです。自然のままの姿で暮らし続けられるよう、一緒に見守っていきましょう。
- 園内の水道水は水質検査の状況により飲用に適さない場合がありますので、お飲み物はご持参ください。
小さな花、小さな鳥、そして窓にやってくる小さなお客さま。県民の森は、春のささやかな発見がたくさん詰まった場所です。ぜひ双眼鏡とカメラを持って、ゆっくり歩きに来てくださいね。






