こんにちは!埼玉県県民の森です。
梅雨のしっとりとした空気の中、園内では初夏ならではの花が咲き始めました。今日は、対照的でありながらどちらも「山の初夏」を感じさせてくれる二つの花、オオバアサガラとコアジサイをご紹介します。
頭上に咲く白いカーテン「オオバアサガラ」
まずは、見上げて楽しむ花から。オオバアサガラです。
エゴノキ科の落葉小高木で、沢沿いや谷あいなど、水分の多い場所を好んで育ちます。木は高さ8メートルから10メートルほどにもなり、枝先から13センチから20センチほどの細長い花房をいくつも垂れ下げて、白い小さな花をたくさん咲かせます。一つひとつの花は下を向いて咲き、近くで見上げると、繊細な星形の花が連なっているのがわかります。
たくさんの花房が下がって咲く姿は、遠目には控えめですが、木の下に立って見上げると、ふわりとした白いカーテンのよう。花の下を歩くと、まるで頭上から「初夏のシャワー」を浴びているような、ひんやりと心地よい感覚に包まれます。
名前は、近縁の「アサガラ」よりも葉が大きいことから「オオバ(大葉)」とつけられたといわれています。じつはこのオオバアサガラ、シカがあまり好んで食べない木としても知られていて、シカの食害が課題となっている地域では、森を再生するための頼もしい木として注目されているそうです。静かに谷を支える、森づくりの仲間でもあるのですね。見た目の美しさだけでなく、そんな一面を知ってから眺めると、また違った頼もしさを感じます。

足元にひろがる香りの霧「コアジサイ」
続いては、見下ろして、そして香りで楽しむ花。コアジサイです。
その名のとおり小さなアジサイの仲間で、日本にだけ自生する固有種です。高さは1メートルから1.5メートルほどと低く、暗く湿った林の中でもよく育ちます。一般的なアジサイのような大きな装飾花はほとんどなく、直径4ミリほどの小さな花が無数に集まって、薄紫から青みを帯びた淡い花のかたまりをつくります。一つひとつは本当に小さいのですが、たくさん集まることで、淡い霧がふわりと漂っているような、独特のやわらかな雰囲気を生み出します。
そして、コアジサイのいちばんの魅力は、その香りです。梅雨の森のしっとりとした空気の中に、甘くやわらかな香りをそっと漂わせます。目立つ姿ではない代わりに、香りで自分の存在をそっと伝えているかのようです。散策の途中でふと甘い香りに気づいたら、ぜひ足元の斜面に目を向けてみてください。
コアジサイの花言葉は「忍耐強い愛」。決して恵まれた環境とはいえない暗い森の奥で、静かに、けれど確かに花を咲かせ、甘い香りをたたえるその姿から生まれた花言葉だといわれています。梅雨という少し憂うつな季節にあって、その香りとやわらかな色合いが、歩く人の心をふっと軽くしてくれる。長雨の日々や、暮らしの中の小さな辛抱ごとを、静かに支えてくれるような花です。
空から、地面から。二つの初夏
頭上で白い房を揺らすオオバアサガラと、足元の斜面に淡く群れて香るコアジサイ。「空から降りてくる初夏」と「地面から立ちのぼる初夏」が、同じ森の中で同時に楽しめるのは、今の季節だけの特別な風景です。
雨上がりの土の香り、どこからか聞こえる小鳥の声、沢のせせらぎ。そこにコアジサイの甘い香りが加わると、目だけでなく、鼻や耳でも季節を感じられます。雨の日や雨上がりは、森の緑がいっそう深く、花の色もしっとりと美しく見えます。足元のぬかるみにお気をつけて、滑りにくい靴でお越しいただくと安心です。
標高約900メートルの県民の森は、平地より少しゆっくりと季節が進みます。すがすがしい初夏の森へ、ぜひ足を運んでみてください。スタッフ一同、お待ちしております。






